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※この記事は2019年7月17日に投稿したものを再編集しました。
運動と脳の関係
運動をすると頭がスッキリするというのは、誰もが経験しているに違いない。
「脳を鍛えるには運動しかない!」の著者は、「運動をするのは、脳を育ててよい状態に保つためである」と主張している。
ある一定の強度で運動をすると、神経伝達物質が放出され、頭がよくなるだけでなく、うつや認知症等の病気を改善する効果もあるという。
以下は同書からの引用であるが、神経伝達物質にはさまざまな種類があり、それぞれが固有の機能を司っている。
運動をするとそれぞれの働きが活発になり、神経伝達物質のバランスが正常な状態に維持されるらしい。
注目すべきは、ニューロンは筋肉と同じように、一旦は壊れてより丈夫なものに作り直されるということだ。
つまり、筋肉と同じように脳も鍛えられるということである。
- 脳内の信号送信の約80パーセントを担うのは二種の神経伝達物質、グルタミン酸とガンマアミノ酪酸(GABA)で、それらは互いにバランスをとりあっている。
- 脳の信号操作とすべての活動を調整している一群の神経伝達物質だ。すなわち、セロトニン、ノルアドレナリン、そしてドーパミンである。セロトニンは脳の機能を正常に保つ。セロトニンは、気分、衝動性、怒り、攻撃性に影響する。ノルアドレナリンは、気分について理解するために研究された最初の神経伝達物質で、注意や知覚、意欲、覚醒に影響する信号をしばしば増強させる。ドーパミンは学習、報酬(満足)、注意力、運動に関係する神経伝達物質と見られており、脳の部位によって正反対の役割を果たすこともある。
- 運動は脳のなかの神経伝達物質と、そのほかの神経化学物質のバランスを保っている
- なにかを学習するには、長期増強(LPT)と呼ばれる動的なメカニズムによってニューロンのつながりを強化することが欠かせない。
- 学習を繰り返すことでシナプスそのものが大きくなり、結合がより強くなる。
- BDFNは、ニューロンの機能を向上させ、その成長を促し、強化し、細胞の死という自然のプロセスから守っている
- ニューロンは筋肉と同じように、いったん壊れて、より丈夫に作り直される。ストレスによって鍛えられ、回復能力を増していくのだ。こうして運動は心身の適応能力を磨き上げていく。(引用元: ジョン・J・レイティ/エリック・ヘイガーマン, 脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方, NHK出版, 2009 )
実行機能(Executive Function)を高める3つの働き
複雑な課題の遂行に際して思考や行動を制御する認知システム、あるいはそれらの認知制御機能のことを 実行機能(Executive Function) という(遂行機能ともいう)。
運動をすることにより、次の3つの働きが活発になる。
- 気分がよくなり、頭がスッキリする。注意力が高まり、やる気が出てくる。
- 新しい情報を記録するためにニューロン同士の結びつきを準備、促進する。
- 海馬の幹細胞から新しいニューロンが成長するのを促す。
これらの働きが活発になることにより、新しい情報の受け入れ体制が整い、実行機能が向上するという。
確かに体調が悪いときや、頭がスッキリしないときは、勉強する気力が出ないし、何かを覚えようとしてもなかなか覚えられないことが多い。
しかし運動すれば、頭がスッキリし、何かをする意欲が湧いてくる。
勉強や仕事をする前に運動をするというのは合理的な考えであるといえよう。
効果的な運動
では、具体的にどんな運動をすればよいのだろうか?
求める効果別にまとめてみた。
実験では、週に 3 回 30 分間のジョギングを 12
週間続けたところ、実行機能が向上したという。
著者は、神経伝達物質を放出する有酸素運動を行うと共に、脳由来神経栄養因子(BDFN)
を増やすような運動、例えば、テニスなど複雑な動きを伴うような運動、あるいは、有酸素運動を
10
分間ほど行った後、ロッククライミングやヨガなど酸素消費量が少なく技能を必要とするような運動を薦めている。
その他の効果
運動することにより、下記の症状や予防などにも効果があるという。
さまざま研究結果をもとに運動の効果について解説されている。
- 不安
- うつ
- 注意欠陥障害
- 依存症
- ホルモンバランスの不調
- 老化
詳しくは「脳を鍛えるには運動しかない!」をご一読いただきたい。
参考文献
ジョン・J・レイティ/エリック・ヘイガーマン, 脳を鍛えるには運動しかない!最新科学でわかった脳細胞の増やし方, NHK出版, 2009